2024.10.08
2024年の最低賃金の全国平均は、昨年より51円引き上げられ1,055円となりました。今日は、この最低賃金について考えてみましょう。
まず、最低賃金を上げる上で注意しなければならないことは、失業者の増加です。
例えば、最低賃金が1,500円に設定されているとします。企業側から見て、時給1,000円なら採算が取れるため雇いたいと思っている企業は、1,500円では採算が合わないため雇用を控えます。
また、労働者側から見ても、時給1,000円以上なら働きたいと思っているにもかかわらず、1,000円では最低賃金の1,500円を下回るため働くことができません。
その結果、企業と労働者のニーズはマッチしているにもかかわらず、失業者が増えてしまいます。
したがって、最低賃金が労働市場の相場よりも高い金額になると必然的に失業者が増えることになるため、最低賃金は労働市場の相場を下回る金額に設定する必要があります。
最低賃金を上げていこうという勇ましい掛け声は結構なのですが、最低賃金を上げることは、それを可能にする経済状況を作ることが重要で、最低賃金をただ上げただけでは、失業者が増えるだけです。
現在、パート労働者を多く雇用している飲食サービス業であっても、最低賃金では人材が集まらない状況であり、そういった意味では、現在は引き上げることができる環境にあると言えます。
では、なぜ最低賃金という規制が必要なのでしょうか。
それは、人気のある職業であるとか、修行だからといった理由で不当に安い賃金で雇用することを防ぐためです。
次に、最低賃金規制の影響を最も受けるのは、配偶者のいるパートで働く人と高齢者です。
パート労働者は、103万円の壁、130万円の壁があることにより、時給が上がるとかえって手取りが減るため、働く時間を減らすという対応を取ってしまいます。130万円を目安にしている人が多く、130万円÷時給で働く時間が決まってしまいます。
加えて、時給を上げることになると、企業側もそれに見合ったハードな作業を労働者に要求することになるため、ゆっくりとした仕事をしたい高齢者は、働きにくくなってしまいます。その結果、最低賃金の規制が、人手不足を加速させる要因になっています。
そもそも、配偶者がいない人や共働き家庭に大きく課税する配偶者控除という制度は、多様な働き方が認められる現代には全くそぐわない存在になっているため、早急に見直されることが望まれます。
このように、最低賃金だけでなく、その範囲やそれを取り巻く税制などのシステムについても見直しを進める時期ではないでしょうか。
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