2023.06.13
今月のリレーコラムは、経営コンサルタント 小野 嘉嵩 が担当いたします。
ここ最近、事業承継のご相談をいただく機会が増えています。
2018年時点で2025年には実に127万人の経営者(国内企業全体の1/3)が廃業すると言われ、また2022年時点の60歳以上の後継者不在率は57.2%にも上ります。M&Aは近年普及してきているとはいえ、全国の年間成約件数は約3,200件(大企業・中堅企業含、日本企業同士)となっており、潜在的な需要に対して大幅に不足しています。
今回は、これまで、M&Aを買い手と売り手の双方の視点でサポートしてきた経験を踏まえ、M&Aに取り組むうえでの取っ掛かりのポイントをお伝えいたします。
まず、基本的なところで、M&Aを支援する会社には、大きく「仲介」と「ファイナンシャルアドバイザー」(FA)の2種類があります。仲介は買い手と売り手の間に立って、「M&Aの成約」を主目的として中立な立場で双方の落とし所を探りつつ交渉するサービスです。FAは買い手もしくは売り手の一方を顧客とし、顧客の要求に沿う取引となるように交渉するサービスです。仲介といえど、納得できない条件で成約することはありません。またFAでも両手の取引(買い手と売り手双方の支援を1社が行う)を行う会社もあり、利用する側としてはサービス内容に大きな差はない認識です。
ただ、仲介会社の方が、買い手と売り手両方のニーズ(件数)を多く蓄積しており、また交渉まで行うため、効率的に進めてくれるメリットがあります。これに対して、FAは、ニッチな業種・業界や特殊なニーズ、難しい案件への対応力が高い印象です。医療・介護・IT等の事業会社、仲介会社をスピンアウトした会社、税理士事務所、経営コンサル会社等がサービス提供している場合が多く、特定の業種の成約実績が豊富であったり、これまで培った専門性を活かしてサービス提供しているためです。
次に、報酬ですが、各社様々です。なお、以下の内容は私自身の調査に基づいています。着手金、中間報酬、成功報酬の3段階ありますが、着手金は請求しない会社のほうが多いです。次に、中間報酬は取る会社のほうが多く、金額は成功報酬の1割程度です。肝心の成功報酬については、レーマン方式という、「取引価格等」のレンジに応じた手数料率で算出する場合が一般的です。
ここで最も注意が必要な点は、「取引価格等」の解釈が各社異なることです。株価+役員退職慰労金+αの「売り手に支払われる金額」を意味する会社もあれば、借入金まで含めた「総資産」を意味する会社もあります。また、中間報酬を差し引くケースが多いですが、差し引かない会社もあります。成功報酬の下限は、大手であれば1,000~2,500万円、サービス開始直後の会社やM&A専業でない会社であれば、500万円程度の会社もあります。
その他にもM&Aのスキーム(主に株式譲渡か事業譲渡の2択)や売り手にとっての売却予定額の算定(バリュエーション)等、希望通りの取引を実現させるためには様々なポイントを押さえておく必要があります。経営者の高齢化を踏まえ、地域の企業・雇用・社会を守るためにも、このあたりを今後ご支援していければと考えています。
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