2021.12.14
今月のリレーコラムでは「研究開発人材」について、中小企業診断士の大賀隆裕が考察いたします。
中小企業が独自製品の開発を志したときに直面するテーマのひとつに「人的リソース」の確保があります。単に頭数が揃えばOKではありません。自社が挑戦する事業分野に一定の専門性を有している人材を充てることが必須条件ですが、それ以外にも求められることが様々あります。
問題を見つけ、適切な課題を設定し、自分で調べて考察を重ねる「素質」が重要です。あえて「素質」と呼ぶのは、訓練だけでは根っこの姿勢が変わりにくいからです。趣味に関することでも構いませんので、突き詰めて・追求することができる人かどうかを見極めて下さい。
エビデンスを元に正しい結論を導くスピードを上げるために、「データサイエンス」人材が欲しいところです。例えば試作や実験を重ねる必要がある業種では、解析のために統計処理が必要になります。「統計ソフト」を導入して補うことも可能ですが、機能を正しく使うには実験計画法や分析手法にある程度の知識が必要です。
市場ニーズに合った価格で製品を提供するために開発の上流で目標原価を設定する「原価企画」の考え方が知られています。変動費・固定費を適正化して利益を確保する「管理会計」の知識が必要になります。
研究開発全体を「マネジメント」する力も求められます。開発の全体感から小項目の課題にブレイクダウンし、PDCAを回しながらゴールに迫らなければなりません。開発納期を設定したスケジュール管理も大事になってきます。
最後に「社内政治」に配慮できるかどうかも効いてきます。成果が得られるまでの期間、予算を確保し、社内で孤立せずに支援を受け続けるのは、実は最も大変なことかもしれません。
以上のように考えていくと、どうやら特定の人物に丸投げするのはほぼ無理だと気づきます。「リーダー」、「スペシャリスト」、「渉外・コミュニケーション」の3役を基本に、その他の機能は兼務にするのか、あるいはメンバーを増やすか意思決定したうえでチームを立ち上げるのが妥当です。
お気づきかもしれませんが、実はこの構成は「CEO」・「CTO」・「CFO」に相当するものです。社内ベンチャーとして自社開発を立ち上げるという言い方をよくしますが、開発に必要な機能を上手く割り振った組織作りと考えるとしっくり来ますね。
経営資源の制約がある中小企業が自社開発を成果に繋げるためにご参考になれば幸いです。
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